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| ポークカツレツ、食べたことあります? 「トンカツ」じゃ無いんですよ。 ぽぉーく、ぽぉーく。 そして「カツ!」と言い切らない、語尾のちょっと気取った感じ。 かっつ、れつぅ。 この「レツ」が付くだけで、とたんに洋食なイメージがしてくるでしょ。 「最後まで真心こもってますよぉ」ってのが、カツレツの「レツ」には含まれているんです。きっと。 で、これがフレンチでもイタリアンでもなくて、「洋食」なんですよ。 「日本じゃないもの全部」ってそのくくりが、アバウトでしょ。 ちょっと古臭い、白人コンプレックスまる出しの、漠然とした憧れをがこもった、でもこの「大体でいい」っていうおおらかな言い回し。 味わい深いでしょ。 「洋食屋さん」なんですよ。 20代前半のころ、昼間は設計活動して、夜中はファミレスでバイトして、8万円の生活費で暮らしていた超貧乏時代がありました。 当然、外食なんて贅沢なことは、まったく出来なくて、ラーメン屋さんにさえも入れないほどでした。 ある時プロジェクトがひと段落して、どうしても自分なりに、ささやかでもお祝いをしたくなって、 「家賃払えなくなってもいいや」と思い切って入ったのが、五日市街道沿いの洋食屋さんでした。 かなりの交通量の道に面しているのにもかかわらず、まったく目立たない店構えで、 「まぁこれくらいで洋食屋ってわかるでしょ」というアバウトさが、レストランとは違う、独特のユルーいオーラを放っていました。 こげ茶色の店内、黄色い白熱灯の明かり、ノッポのぼうしのコックさんが一人、首元にはちょっとおしゃれなネッカチーフ。 うーん、まさしく絵に描いたような洋食屋さん。まるでシティーボーイズのコントのようです。 その時の僕は、肉体的にも精神的にもボロボロで、雑巾みたいになっていました。 腹が減っているなんてのは、とっくの昔に通り越していて、「味が濃くてガツンとくるのを持ってきてください」と注文したいところだったのですが、 なぜか「ぽぉーく、かつれつ」の気の抜けたメニューに目が止まってしまったのです。 今思えば、癒されたかったのかもしれません。 そして、この時生まれて初めて食べた、ポークカツレツのうまかったこと!! 今でもはっきり覚えていますが、一口目を口に入れた瞬間、あまりにうまくて、笑いがこみ上げてきました。 もうなんだか可笑しくて可笑しくて仕方が無くて、下向いて、「クックックックックッ!」って。 ずーっと笑いながら食べていました。 たぶんあの時は、アタマのネジが完全に外れちゃったんでしょうね。 後にも先にも、食い物であんなに感動したことはありませんしでした。 「旨いもの作れる人って、ノーベル賞の人なんかよりも、ズーッとエライぞ!」とその時心の底から思っていました。 その後も貧乏はしばらく続いたので、再び店を訪れるまでには、それからまだ1年くらいかかりました。 で、再び、今度はウチのカミさんも連れて行ったのですが、 こんどは二人して下向いて、「クックックックックッ!」。 やっぱり旨いんですよ。 べつに、想い出が旨く感じさせているわけじゃなくて、いつ食べても、今食べてもホントにうまい! きっと世の中に旨いものなんて、僕が知らないだけで、きっと、もっともっとあるとは思う。 でもね、1000円でおつりがくるような値段でね、こんなに旨いと思わせてくれる店って、そうザラには無いですよ。 ファミレスで食べたって1000円越しちゃうでしょ。 で、感動なんか絶対ありえない。 その後、だんだんと人並みの生活が出来るようになって、ちょくちょく通えるようになり、メニューにあるもの片っ端から食べてみました。 旨いです。何食っても。ホントに。 小金井公園の近く、五日市街道沿いです。 近くを通ることがあったら、ぜひ寄ってみてください。 ホントはもうちょっとたくさんの人が、自然にフラッと寄ってみたくなるような、お店の外観だといいと思うんですけどね。 インテリアも、もうちょっと落ち着けて、さりげなくおしゃれだといいんですけどね。 だから「改装する時は僕に依頼してくださいね」って言ってあります。 おいしい店だからね、それにふさわしい空間を作ってあげたいんですよ。 いつになることかわかりませんが、まぁ気長にね、待ってますよ。 *追記 たいへん残念ですがセピア亭は2003年7月に閉店してしまいました。 最後の日にはたくさんの常連さんが詰めかけ、 閉店時間を待たずに食材が尽きてしまう盛況ぶりでした。 またいつか、復活してくれることを期待しています。 ![]() |
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